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stella

今日するのかなって準備してきたのに何にもなくてただ一緒に寝るだけで自分だけこんな風に意識してしまって恥ずかしい……ってもぞって寝る辻ちゃん。それわかってる犬飼君。(あれ、誘ってくれないの?)
辻ちゃんって声かけた時にはもう寝ちゃってて、嘘でしょ、辻ちゃん。これは困ったな。最初から手、出しとけばよかった。って辻ちゃんのこと抱きしめながら寝る。まあ、これだけでもいいかな。ふって愛おしそうに笑う。

辻ちゃんはちょっと目が覚めて、温かいな……優しく触れる犬飼先輩の手が心地いいな。隣に居させてくれるのを嬉しく思った。

次の時もきっと何もないんだろうなって思って準備していかなくて、すぐに寝ようとする辻ちゃん。
そしたら犬飼君から手を出されて
「あっ…の。すみません、今日はその…準備してないです」
「今日は、なんだ?」(あーあ、もったいないことしちゃったな)
「っ……。……前回はしてた…んですけど。俺ばっかりだなって…恥ずかしく思ったんです。一緒に居れたら、それだけで嬉しいですから」
「……」

……ああ、ホントに。そうやっておれが嬉しくなる言葉を、いつも何とも無いかのようにくれるんだ。おれに気を遣って、じゃ無く偽りのない言葉をくれる。辻ちゃんの口からこぼれる言葉はすぐにおれの耳に届いて、満たしてくれる。

おれがどれ程その瞬間が好きか、なんて知んないでしょ。

心揺らされることがこんなにも心地よく感じるのは、愛おしく思えるのは、全部、辻ちゃんだから。気持ちをもらっても、体を繋げても、まだ欲しいって思ったんだ。自分がこんなに欲深かったなんて、初めて知ったんだよね。

知ってるのに、感じた事のない気持ちを教えてくれるのは、いつだって。
――辻ちゃんなんだよ。

だから、怖くなった。おれでも、こんな気持ちになれるのを知ってしまった。……渇きを覚えるのはなんでだと思う?それは「満たされたことがある」からだよ。知ってしまったら、戻れない。

隣に居てくれるだけでいいって言ったのは、嘘じゃないけど。……手にしても渇きを覚えることまで、知りたくなかったよね。
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